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オルタナティブにいきたい。

取り留めのないことを取り留めなく書き留めるブログ

愛なんてまっぴらだ。

伊藤計劃『ハーモニー』読み終わりました。記事タイトルは作中の主人公と父親の再会シーンから拝借。毎回この記事タイトルにする文章を決めるときに、ストーリー上重要過ぎず、かつストーリーを象徴してるものを探すんだけど、そんな都合のいいものすぐに見つけられなかったりする。あれかなぁ、読解力ハンパない人とかは読んでる最中に「これだ!」って見つけられたりすんのかな…たまに迷い過ぎてよく分かんないところを拝借しちゃうんだよね。

 

※一応ネタバレ注意です。

 

伊藤計劃『ハーモニー』

 

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

ちょうどアニメ映画が公開されている時期だったので、『虐殺器官』のように中古では見つからず新版で購入。しかもあの、販促の帯が帯どころかカバーになってるバージョンなので、通常の真っ白な表紙から盛り込まれようがハンパないですね。まさに作中で語られた「至るところに広告」みたいなのの一部が意図せずここに現れているようです。そんなことないか。

前回の『虐殺器官』で上手く言える自信がないと半ば匙を投げたような感想を書いてしまったので、ハーモニーをちゃんと楽しめるだろうかという懸念もあったんだけど、予想以上に面白かったです。ハーモニーを読んだおかげで『虐殺器官』を読んでおいて良かったな、って思えるくらい。

舞台はおそらく『虐殺器官』から見て未来の世界。大きな世界的混乱を経た後に人類は大規模な福祉厚生社会を実現させ、自らの健康状態を外注で管理させることにより病気にかからない生活を送れるようになった。人々はみな社会に必要なリソースであるという認識を強め、みなが隣人を思いやる調和のとれた世界の中で、それを是とせずデット・メディアで知識を蓄える少女・御冷ミァハに同じように世界に違和感を感じていることを見抜かれ、彼女に憧れを抱くようになる霧慧トァンの物語。

いやもう、世界がこんなにも優しくて、死への恐怖も最大限取り除かれた世界が実現したのなら何も文句はないと思いそうなもんだけど、全然そうじゃないんだね。そうやって人々の生活が保障されていけば行くほど失っていくものとか、それを苦痛に感じる人の存在とか、どこまで行っても完璧な世界はないんだなぁと。

初めから世界に異を唱えてたミァハの真の目的とか、序盤のカリスマ感というかトァンがこれでもかと言うほど持ち上げるから、「えっ、そっちなの?」って思わされた。こんな世界粛清してやる!という意気込みがまさかそっちとは。

あともう一つやられたのは文章に盛り込まれたタグ。章題は定義付けされてるし、各章の冒頭は必ずetmlっていう、htmlみたいな感じで始まってるし、ストーリーが進む中でも感情の描写が入るときにはそれを現す言葉のタグで囲まれてたり…未来感がよく演出されてるなー、凝ってんなぁとか思ってたらそういう事だった。

読了後はもう何とも言えない気持ち。救われたのか救われなかったのか、そもそもどうなればよかったのか、答えなんて出るはずのないのに思考だけがぐるぐる回っちゃうような、そんなふうに心を奪われた作品でした。絶対好みが分かれるねこれ。俺は作品のテーマもろともすごい好き。

 

3月にハーモニーの映画発売&レンタル開始らしいですね。読んでる最中にツイッターで誰か一緒に観ようとか言ってたけど、これは人と見れる映画なのかどうなのかちょっとよく分かんなくなってきましたね。でも誰か一緒に観よう。出来ればタバコ吸えるところで。